弁理士が教える特許取得にかかる費用と相場!相場を知ることで騙されない

特許を出願する際、具体的にどれくらいの費用がかかるかをご存知でしょうか?この記事では、手続きを外部に依頼する場合と自力で行なう場合のそれぞれの相場や、特許取得にかかる費用を抑える方法について解説します。

当サイト監修者:日本知財標準事務所 所長 弁理士 齋藤 拓也 1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。17年間で250社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。現在は、大企業の新規事業開発サポートや海外企業とのクロスボーダー 案件を含む特許ライセンス・売買等特許活用業務等に携わる。

特許取得に必要な費用

特許取得にかかる費用について、手続きの順を追って解説します。

出願

特許を出願するには特許印紙を用意します。この段階で特許印紙に必要な費用は14,000円です。

出願審査請求

特許庁では、ただ出願をしただけでは審査が行なわれません。「出願した発明を審査してほしい」という意思を示すために必要な工程として出願審査請求を行ないます。出願審査請求には改めて特許印紙が必要です。

費用は特許印紙代138,000円+請求項×4,000円。出願書の特許請求の欄において、複数の範囲を請求している場合は請求項の数に応じて費用が’高くなります。

たとえば、請求項が1項であれば出願審査請求にかかる費用は142,000円。請求項が10項であれば178,000円となります。

特許査定

審査で発明が認められ、特許査定を受けたら特許料を払うことで特許を取得できます。設定納付の際に払う特許料は1~3年分。さらに請求項によっても費用が変わってきます。

1年分の特許料は2,100円に請求項1項につき200円を加えた額です。請求項が1項の場合1~3年分の特許料は6,900円となり、請求項が10項であれば12,300円となるのです。

特許取得にかかる費用の総額

1-1.から1-3.までの手続きを行ない、特許取得においてかかる最低限の費用は総額で162,900円。これはあくまで請求項が1項であることを想定した金額のため、請求項が増えれば増えるほど費用も高くなります。

さらに特許査定後に支払う特許料が 1~3年分のため、4年目以降も特許権を維持したい場合には前年までに特許料を支払わなければなりません。

この場合、4年目から6年目まで特許料は毎年6,400円+請求項×500円。7年目から9年目には毎年19,300円+請求項×1,500円、10年目から20年目には毎年55,400円+請求校×4,300円となります。年数が経過すればするほど特許料も高くなる計算です。

年数 費用
4年目~6年目 毎年6,400円+請求項×500円
7年目~9年目 毎年19,300円+請求項×1,500円
10年目~20年目 毎年55,400円+請求校×4,300円

特許を20年間維持したい場合、4年目以降にかかる特許料は請求項が1項の場合でも総額746700円。この金額に出願・出願審査請求にかかる金額156,000円を足すと、902,700円。これはあくまで請求項が1項である場合の総額です。

特許を過不足なくビジネスで活かすには、用途や事業展開にマッチした複数の請求項で権利を取得することが望ましいため、最低でも100万円程度の費用が必要であると考えて良いでしょう。

特許事務所に手続きを依頼した場合の費用

次に特許事務所に手続きを依頼した場合の費用について、順を追って解説します。

出願

特許事務所に手続きを依頼した場合、特許印紙代のほかにもさまざまな費用が発生します。特許請求の範囲における請求項の数、発明の内容を説明した明細書のページ数、さらに発明内容への理解に役立てるための図面の数など、手続きにかかる工数や求められる知識などに応じて費用は変わってきます。

一般的に、特許事務所へ支払う出願手続き費用は、特許印紙代14,000円と併せて約350,000円〜500,000円程度です。

出願審査請求

次に、出願審査請求です。特許印紙代138,000円+請求項×4,000円のほかに、出願審査請求の際に特許事務所へ支払う手数料の相場は10,000円〜20,000円程度。併せて160,000円〜200,000円程度が必要になると考えられます。

意見書・補正書の提出

次に拒絶理由通知が届いた際の手続きです。この通知に対して、審査官の判断が誤っていることを指摘する意見書や、出願内容・特許請求の範囲などを補充・訂正する補正書などを提出することで、審査を再度受けられるようになります。

この意見書や補正書の手続きにかかる手数料は、難易度などによってさまざま。しかしながら出願時よりもさらに高度な知識や判断が求められるため、相場として約100,000円〜180,000円程度がかかるとされています。

また、意見書や補正書の内容が受け入れられず、複数回にわたって拒絶理由通知が届くことも。その場合にも、新たな意見書や補正書の手続きを依頼するたびに費用が別途かかります。

さらにこの工程を繰り返し、拒絶査定を受けてしまった場合には拒絶査定不服審判で改めて不服を申し立てることが可能です。この場合、特許事務所に対してさらに費用を支払うことになります。

特許査定

特許査定を受けて特許が認められた場合、1-3.で解説した1~3年分の特許料6,300円+請求項×600円のほかに、納付手続き費用や成功報酬などの費用を特許事務所に支払う必要があります。一般的な相場として、納付手続きの費用は約10,000円〜20,000円、成功報酬は100,000円〜160,000円程度とされています。

特許事務所に依頼した場合の総額

2-1.から2-4.までの手続きを行ない、特許取得においてかかる総額は約800,000円〜1,000,000円程度です。

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自力で手続きを行なう場合の費用

個人や自社など、専門家に頼らず自力で手続きを行なう場合には追加費用はかかりません。出願から特許取得までの基本的な費用の最低額は1-4.で解説した162,900円。

請求項が増えるごとに金額は高くなります。また、拒絶理由通知を受けて意見書・補正書を提出する際や、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判請求を行なう場合には、費用が別途かかります。

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特許取得にかかる費用を抑える方法

最後に、特許を取得するにあたって発生する費用を抑える方法について解説します。減免申請には、出願審査請求書や特許料納付書の特記事項欄に減免を受ける旨の記載が必要となります。

企業の場合

まずは企業・法人団体の場合に活用できる減免制度です。

小規模企業

常勤の従業員20名以下(または商業・サービス業に属する事業については5名以下)であり、大企業(中小企業の定義に当てはまらない企業)に支配されていないケースです。
この場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の3分の1まで軽減されます。

中小ベンチャー・スタートアップ企業

設立10年未満または出資総額3億円以下であり、大企業(資本金または出資総額が3億円以上の法人)に支配されていないケースです。この場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の3分の1まで軽減されます。

中小企業

大企業(中小企業の定義に当てはまらない企業)に支配されていないこと、加えて、従業員数または資本金要件について下記のいずれかを満たしているケースです。この場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の2分の1まで軽減されます。

  • 製造業、建設業、運輸業その他の業種(以下に掲げる業種を除く)、ソフトウェア業または情報処理サービス業
    常勤の従業員数300人以下、資本金または出資金総額3億円以下
  • ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)
    常勤の従業員数900人以下、資本金または出資金総額3億円以下
  • 旅館業
    常勤の従業員数200人以下、資本金または出資金総額5,000万円以下
  • 卸売業
    常勤の従業員数100人以下、資本金または出資金総額1億円以下
  • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業および旅館業を除く)
    常勤の従業員数100人以下、資本金または出資金総額5,000万円以下
  • 小売業
    常勤の従業員数50人以下、資本金または出資金総額5,000万円以下

法人税非課税中小企業

資本金または出資総額が3億円以下の法人税非課税企業であり、また、他の法人に支配されていないケースです。この場合、願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の2分の1まで軽減されます。

個人事業主の場合

次に個人事業主が活用できる減免制度について解説します。

小規模事業者

常勤の従業員20名以下(または商業・サービス業に属する事業については5名以下)である場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の3分の1まで軽減されます。

中小ベンチャー事業者

事業開始後10年未満である場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の3分の1まで軽減されます。

中小企業(個人事業主)

下記の従業員数要件を満たしている場合、出願審査請求料と1年目〜10年目までの特許料が通常の2分の1まで軽減されます。

  • 製造業、建設業、運輸業その他の業種(以下に掲げる業種を除く)、ソフトウェア業または情報処理サービス業
    常勤の従業員数300人以下
  • ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)
    常勤の従業員数900人以下
    ・旅館業
    常勤の従業員数200人以下
  • 卸売業
    常勤の従業員数100人以下
  • サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業および旅館業を除く)
    常勤の従業員数100人以下
  • 小売業
    常勤の従業員数50人以下

まとめ

特許取得にかかる費用は特許事務所に依頼する場合と、自社や個人など自力で行なう場合とでは大きな差があります。予算や特許取得の目標時期、手続きに着手できる人員などをしっかりと見極めながら、外部に依頼するのか、自力で手続きを行なうのかを慎重に判断しましょう。

その際は、費用の面以外でも特許事務所に依頼する場合と、自社や個人など自力で行なう場合で比較して判断することをおすすめします。

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